| 2021.08.11
おくびょうキュリオと孤独な絵描き|「リアルの商業空間」と「バーチャル」の垣根を越えて
こんにちは、COOの加藤です。
2019年に池袋パルコ様の開業50周年記念イベントとして、池袋パルコ館内を舞台にAR技術を活用したパズルゲーム型アート展「あなたが動かすアート展 〜おくびょうキュリオと孤独な絵描き〜」を期間限定で開催しました。
プレスリリース
池袋パルコ50周年を記念し、ENDROLLと初のコラボレーションARエンタテイメント技術を活用した館内を回る「 ARパズルゲーム型アート展」を期間限定で開催!
このゲームは、ストーリーの指示に従い、館内各所に設置された絵画を巡ります。その絵画をARカメラで見ることで出現するパズルを解くことでストーリーを進めることができます。
言ってしまえば、館内の各ポイントを巡るスタンプラリーのような体験ですが、「リアルの商業空間」と「バーチャル」の垣根を越えて、ENDROLLが目指す「ユーザーが主人公になる」体験をいかに創るかを非常に試行錯誤した開発でした。
今回はこの「おくびょうキュリオと孤独な絵描き」という作品をご紹介します。
ラビットホールによる「物語の導入」
「ユーザーが主人公になる」ために、「物語世界と現実世界をシームレスにつなぐこと」による没入感がENDROLLは大切だと考えています。
キャラクターの成長を通してユーザーの心が動くような体験、ゲームのエンドロールが終わった後に、現実のユーザーにポジティブな変化が起こるような体験を創るためには、ユーザーのコンテンツの没入度が大きく寄与するからです。
しかし、スタート地点の8F飲食フロアという雑多な空間から、いかにゲームの世界へユーザーを引き込むかは、大変頭を悩まされたポイントでした。
そこで利用したのが、「ラビットホール」という手法です。
ラビットホールとは専門用語で、「不思議な世界への入り口、つまり異なる層の物語をつなぐ結び目」という意味です。
このゲームでは、スタート地点の飲食フロアに、ラビットホールとして写真のような特設ブースを設置、またキャストがアートの画商となり、動画や語りを通してゲームの世界へ誘うことを試みました。
いきなりゲームを始めるのではなく、このように現実の中にゲームの入り口となるブースやキャストの働きかけで、ユーザーを現実世界に取り残さずに、ゲームの世界へシームレスに連れていけるようにしました。
■ゲームストーリー
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売れない孤独な絵描きがいた。
自分を理解してくれる存在がほしい…
そんな中、絵描きがふと書いた一枚に命が宿る。
絵描きは好奇心旺盛な子でいてほしいという願いを込めて、
その絵に「キュリオ」という名前をつけた。
感受性の強いキュリオを喜ばせたい一心で、絵描きはたくさんの絵を描いた。
ある日、絵描きは病におかされる。
死期を悟った絵描きは、キュリオに伝えたいメッセージを5枚の絵に残しこの世を去るが、
最後までキュリオがその絵を見ることはなく、世の中から忘れ去られた…
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ユーザーの能動的な行動で変化するストーリー
ユーザーが明日から少し好奇心を持って過ごしてみようと思ってもらえる体験を目指すことも、このゲームでは大事にしました。
そのために、ユーザーの能動的な行動を必要とするストーリーを利用することにしました。
メインキャラクターである絵の妖精「キュリオ」は、失った感情を取り戻すために、世界(池袋パルコ内)を旅します。徐々に感情を思い出して行ったキュリオは、最後に「好奇心」を取り戻すことで、外の世界に旅に出ることを決意するというストーリーです。
ユーザーはキュリオが感情を取り戻すために、館内の絵画を探したり、パズルを解いたりする必要があります。
このようなユーザー自身の能動的な行動により、キュリオが徐々に成長することを感じることができます。
この体験により、ストーリーをただ見るだけではなく、ユーザーとキャラクターとのコミュニケーションが生まれます。45分という短い時間の中でも、キュリオとのより密な体験を演出し、まるで現実にキュリオが存在しているかのように感じさせ、愛着を持てる存在へと引き上げました。
このような愛着を感じるキュリオの成長に共感して、ゲーム後のユーザーの行動変化を狙いました。
トリッキーなARギミックを活用したキュリオとの記念撮影
ユーザーにとって新しい体験を創るために、ARのギミックにもこだわりました。
ARの技術はまだ未熟のため、なぜARをわざわざ使うのかを大事にしながら制作をしています。ここを失敗すると、ARを使わされている感をユーザーが持ってしまい、体験を損なってしまいます。
コンテンツ終了まじかのギミックなのですが、特設ブースの横壁に設置された鏡に専用パネルを移すことで、ARマーカーとなりキュリオが飛び出す仕組みとなっています。
一緒に旅をした可愛いキュリオと鏡越しに写真が撮影ができるような演出になっています。
多くのお客様がこのギミックを楽しんでいただけたようで、SNSに多くの発信をしていただけました。
この企画では、ラビットホール・ストーリー・ARギミックを活用することで、「リアルの商業空間」と「バーチャル」の垣根を越えた新たなエンターテインメントの形を見せることができたと感じています。
「ユーザーが主人公になる」体験を、より多くの人にと届けられるように引き続きコンテンツ開発を行って参ります。
ENDROLLの手掛けた他の作品についてご興味を持っていただけた方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。
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